3人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話 曇天と海と制服の女の子
最初から気が乗らなかったんだ。
誰だよ、遊園地に行こうなんて言い出したのは。
小学校の卒業式を目前に控えた僕達は、地元の遊園地で遊んでいた。
僕を含めた男女七人組で、男四人、女が三人だった。
友人の男達がここぞとばかりにかっこつけて、女の子達はジェットコースターで男にべたべたと甘える。
そんな姿を見ていて、僕は気持ちが疲れてしまった。
それで僕は一人、遊園地から抜け出た。
でもきっと、誰も気づいてないんじゃないかな。
僕がいなくなったことに。
無理に作り笑いを浮かべているよりは、こうして一人で海を眺めているほうがまだマシだった。
鳥が鳴いてる。
僕は空を見上げた。
灰色の空はどこまでも続いて、空と海は同じ色をしてた。
海は穏やかだった。
潮の香りがした。
海岸には僕一人だけだった。
海を臨むように回転する観覧車には、昼過ぎだというのにもうライトが灯っていた。
緑や赤のライトがちかちか光って、薄暗い曇天の午後にはお似合いだった。
こんな雰囲気にぴったりの音楽を聴けたらなと思うんだけど、残念ながら僕は音楽に詳しくない。
最初のコメントを投稿しよう!