第一話 曇天と海と制服の女の子

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第一話 曇天と海と制服の女の子

 最初から気が乗らなかったんだ。  誰だよ、遊園地に行こうなんて言い出したのは。  小学校の卒業式を目前に控えた僕達は、地元の遊園地で遊んでいた。  僕を含めた男女七人組で、男四人、女が三人だった。  友人の男達がここぞとばかりにかっこつけて、女の子達はジェットコースターで男にべたべたと甘える。  そんな姿を見ていて、僕は気持ちが疲れてしまった。  それで僕は一人、遊園地から抜け出た。  でもきっと、誰も気づいてないんじゃないかな。  僕がいなくなったことに。  無理に作り笑いを浮かべているよりは、こうして一人で海を眺めているほうがまだマシだった。  鳥が鳴いてる。  僕は空を見上げた。  灰色の空はどこまでも続いて、空と海は同じ色をしてた。  海は穏やかだった。  潮の香りがした。  海岸には僕一人だけだった。  海を臨むように回転する観覧車には、昼過ぎだというのにもうライトが灯っていた。  緑や赤のライトがちかちか光って、薄暗い曇天の午後にはお似合いだった。  こんな雰囲気にぴったりの音楽を聴けたらなと思うんだけど、残念ながら僕は音楽に詳しくない。
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