第一話 曇天と海と制服の女の子

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 それに音楽プレーヤーだって持ってない。  さっき遊園地で乗ったお化け屋敷だけは面白かったなあ、なんてふと思い出す。  歩いていくタイプじゃなくて、ライド型のお化け屋敷だった。  みんなでじゃんけんをして、僕は渡辺(わたなべ)さんって女の子と二人で乗ることになった。彼女はその結果になんだか不服そうだった。  僕達は小さな黒い乗り物に、係員によって押し込まれた。乗り物が動き出してから終わるまでの間、渡辺さんは一言だって喋らなかった。きゃー、とも言わなかった。  でも僕は、そんな彼女のことは気にせず楽しんだ。  レールに沿って乗り物は進み、それは終始きーきーと音を立てていた。  お化け屋敷の中はほとんど暗闇で、機械仕掛けのお化けの唐突な出現に伴う派手な効果音と毒々しい照明が僕を驚かそうとした。実際、驚きはしなかったけど。あんなのに驚くことが出来るのなんて、きっと幼稚園生くらいのものだろう。  西洋風のお化け屋敷だった。出てくるお化けはみんな定番のモンスターばっかりだった。それも僕の気に入った。  先の尖った木の杭でヴァンパイアがぶっ刺されるシーンは、特に素晴らしかった。
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