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何度も何度も書き直したルーズリーフをそっと閉じると、浜谷憂希は心の中で繰り返した。
完成だ、完璧だ、完結だっ!
やがてメロディが付いて思わず口に出しそうになったが、授業中なのでぐっと我慢する。
彼は漫研に所属する中学二年生。
完成したとは言っても、ページごとのコマ割や構図、セリフをラフに書いた「ネーム」と呼ばれる漫画の設計図が出来ただけ。キャラは全員まだ棒人間だ。
ちゃんと作品になるのはまだ先だが、今回は良いギャグ漫画が出来そうでわくわくが止まらない。
休み時間になると隣の席の最笑が、その名前通りにキラキラっと笑いながら肩をつついて来た。
「浜谷君、また漫画描いてたよね?
たまには私にも見せてくれないと、先生に言うよ?」
「おっ、おう最笑ちゃん!描き上げたらね」
「そう言っていっつも見せてくれないのよねーもう。浜谷君嫌い、嘘つき」
ふくれて見せながらやはり笑っている彼女。
その笑顔は、見慣れていてもみとれてしまう程に可愛らしい。
冗談と分かっていても「嫌い」と言われると何だか傷付いた気分になる。
本当は見せたい。
この漫画でこの子がもっと笑ってくれたら、どんなに幸せだろう。
しかし、最笑に見せるのは恥ずかし過ぎた。
だって主人公の女勇者・サエルのモデルは、他ならぬ彼女なのだから。
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