嘘と祈り、或いは煩悩

5/12
前へ
/12ページ
次へ
彼女がぽつりと呟く。 それは柔らかな静寂の水面に注意深く滴を垂らすかのように。 「私、先週に婚約を解消したんですよ。」 唐突な、そして意外な彼女のその言葉に、 俺は冷や水を浴びせられたような心持ちとなる。 驚いたような視線を向ける俺。 彼女は言葉を続ける。 その顔に先程から変わらぬ柔らかな微笑みを浮かべながら。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加