化けの皮

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 不快なものだなと思う。私は私の顔が嫌いだ。  ここがこのように醜い、などと具体的に自分の不出来さを言語化できるわけではない。考えてもみろ、自分のどこが悪いのかを的確にわかっているのならば、あとはそこを徹底的に手直しするだけでいいに決まっている。  鼻が低いならハイライトとシェーディングを。唇が薄いなら軽くはみ出すように口紅を載せ、中央にぽってりとグロスを置けばそれなりには誤魔化せる。目が小さいならアイシャドウをくっきりと塗り、目尻のアイラインをほんの数ミリ長く描き、ビューラーで持ち上げた睫毛をうんと伸ばし、涙袋をふっくら見せるような影と光をバランスよく配置するだけでアイドルのような瞳にだってなれる。それでも足りないと思うのならば、いっそ医者にでもかかればいい。低い鼻も薄い唇も小さな目も、そばかすも皺も頬のたるみも、縁取られた輪郭すらも、この世の中、大概のものは金次第だ。  しかし、私は私の何が悪いのかがわからない。  本当にわからないのだ。  けれどそれでも私は私の顔を醜悪だと、悪質だと、不出来だと、心の底から思ってしまう。  きっと私は病んでいる。
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