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おそらく私は自分が考えているほど不出来な容姿ではない。
むしろ“人一倍優れている”と己惚れることすら許されるほどなのだろう。
おそらく私は誰から見ても可愛らしく、周りからも愛されて然るべき容姿の人間なのだ。私が私の容姿に不出来なパーツを見つけられない理由は、そもそもそういった不具合と称せる部分がないから、ただそれだけの話なのだ。
けれど、それでも私は私の容姿を、どうしても、どうしても許せなかった。
祖母の呪いを一身に受けた私は、鏡を恐れ、ショーウィンドウの映り込みを避けるように道を歩き、俯きがちに早足で街を通り抜け、冬場になれば心から安堵して大ぶりのマスクを口元に宛がってしまう。
たとえ不出来だったとしても、あるいはとてつもなく優れていたとしても、どのような理由があったとしても私はもう二度と私の見た目を他人に評価されたくはなかった。
お願いだから私を、私という個体を見てくれ、誰とも比較してくれるな、私の表皮なんかどうだっていいはずだろう、誰でもいい、誰か私を、“私自身”を見てくれ。
私の叫びは私の皮を突き破ることができない。
私は私が不快だった。
私は私が嫌いだった。
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