Side Y

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 試合を眺めながら、いつも悔しくてたまらなかった。俺の方が上手いのにって。俺なら、今のシュート絶対決めてたのにって。  で、小五なりにやさぐれていた俺を見兼ねたコーチが、俺の親に渡してくれたのが、ドルフィンズ遠泳クラブが主催する、サマーキャンプのチラシだったって訳だ。  夏休み、一週間の合宿。  海での遠泳を通じて体を鍛えつつ自然と触れ合い、人間の小ささを知り、謙虚さを学ぶ。そして同時に、最長二キロを泳ぎきることで達成感を味わい、自信をつける。  そういうお題目の企画だった。もちろん、医師と栄養士が同行し、有資格者のキャンプリーダーがプログラムを監督する。  俺は全然乗り気じゃなかったけど、親はそれなりに気に入ったみたいだった。気がつくと俺は、総勢三十人の小学生たちと大型バスに乗って、三浦半島の田舎道を東京湾の南端に向かっていた。
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