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――だから、甘えてしまったのかもしれないな……
エレベーターの復旧まで時間がかかると分かったら、なんか変なスイッチが入ってしまったんだ。いつでも脳裏にへばり付いている「死」というものが目の前に迫ってきて、後先考えられなくなった。
したくて仕方ないのに、ずっと我慢していたことを、したくなってしまったんだ。
キスっていうか――、ただ、ヨシダに、触れてみたかったんだ。
――困らせるつもりなんか、なかったんだよ……。
死ぬのは嫌だけど、二人っきりで閉じ込められたのは悪くなかった。一緒にいられて嬉しかった。こんなの、ヨシダには災難でしかないだろうけど。
でも、俺には――……。
「分かったよ……ッ!」
――あれ?
顔に微かに風がかかった。
空気が動いたと思ったら、ヨシダが、隣に座ってくれたみたいだ。
「クソ……ッ! 隣にいるだけだからな……!」
ヨシダは、怒っているみたいに言った。でも、確かに隣に座っている。
「……あ……いいの……?」
「くっつくなよ……! 暑いし、キモい!」
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