Side T

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 後日知らされたところでは、前夜にあった落雷が、エレベーター故障多発の原因だったらしい。  現在の都市インフラは落雷対策が為されているが、古い電話回線の中には保護されていないものが残っている。そこから通信回線が感電してオーバーロードとかいう現象が発生し、この地域のいくつかの施設の電子機器がダメージを食らった。  その中に、俺たちの高校も含まれていた、ということらしい。確かに、校舎は築五十年だから、どこかに古い回線が残っていたとしてもおかしくはない。 「そんなこと、あんだなー。なんか俺、あれ以来ちょっとエレベーター乗んの怖いんだけど」 「まあ、事情がわかってよかったよ。修理チームが近くで作業してたのもラッキーだったし」  そう、十五件目の故障ではあったが、移動の都合上、順番を飛ばして修理に来てくれたのだ。 「そうか? 慰謝料も貰えねえしよー、ちっとも良くない」  ヨシダは不満顔だ。  でも、そんなことより、俺が真相を知りたいのは別のことだった。 「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」 「なんだよ?」  改めて向き合ってみると、ヨシダは居心地が悪そうだ。
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