Side Y

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Side Y

 これまでの、割と平凡な十七年の人生の中にも、それなりにピンチってものはあった。  ブランコから落ちて起き上がり、戻ってきたブランコに後頭部を強打されて救急車に運ばれたのは、幼稚園生のとき。  出来もしないクイックターンを決めようとしてプールの壁に腰を打ち付け、危うく溺れかけたのは小四の夏だったろうか。  一時停止の白線を無視してミニバンにはねられ、チャリンコごと空を飛んだ中二の二月には、銀色に光る死神の鎌を見た。 ――でも、今ほどの恐怖を感じたことは、かつてねえ。  俺は、鼻先一センチのところにあるスッと通った鼻筋を、寄り目になりながら殺気を込めて睨みつけていた。 「ね? キスも経験しないまま死んでしまうなんて、間違っていると思わないか?」
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