スルメ

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「これってどう違うの」  男が店主に声をかけた。指差す先には、2種類のスルメ。 「1000円のほうが一般的なやつで、1500円のはあまり出回らないやつっす」  ぶっきらぼうな返答に、 「1500円のはおいしいの」 「まぁ、人によりますけど。噛めば噛むほど味が出ますよ」  ふぅむ。噛めば噛むほどか。  男は1500円を支払い、帰路についた。  その日の晩酌。  スルメは軽く炙り、細く切った。イカの強い匂いが部屋を満たす。七味とマヨネーズも小皿に盛った。  男は以前購入した少しいい酒を開けた。米の香りがふわりと立ち上り、自然と顔がほころぶ。  おちょこにつぎ、一口。うまい。優しい甘さが口いっぱいに広がる。  そこにスルメを、まずはそのままかじる。 「んふぅ」  うまい。これは、確かにうまい。  一口噛むたび、硬いスルメから味が染み出す。 「こりゃいいもの買ったな」  男は緩みきった顔でスルメをかみ続ける。  もぐ、もぐ、……もぐ。 「ん?」  もぐ……もぐ、うぇっ。 「なんだこれは!」  男は反射的にスルメを吐き出した。  こんなスルメ、食べれたもんじゃない!  次の日、スルメを買った店に電話をかけた。 「昨日おたくで買った1500円のスルメ、一体どういうことですか。食べれたもんじゃなかったよ」 「あれ、言いませんでしたっけ」  電話口の店主はぶっきらぼうに続けた。 「噛むたび味が出るんすけど、上限がないって」 
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