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『美紀だけに話すけど…実は、彼氏が出来たんだ。』
私はこの短い文を何度も何度もみつめ、そして、勇気を振り絞って送信をタップした。
送ってすぐに既読が付いて…
「わっ!」
突然の着信音に、驚いて声が出てしまった。
相手は、今、LINEを送った美紀だ。
「は、はい。」
「おめでとう!
良かったじゃん!
はぁ~、これで私も安心だよ。
ね、詳しいことはまた夜にでも教えてよ!じゃね!」
「う、うん。」
言いたいことだけ言って、美紀の話は、一方的に終わった。
出勤前は慌ただしくて、たとえ一分だって惜しい。
そんな中、わざわざ電話をかけて来てくれたのは、美紀がそれほど喜んでくれたっていうことで…
そう思うと、私の胸は罪悪感で埋め尽くされた。
だって…さっきのLINEは嘘だから。
私には彼氏なんて出来てない。
子供の頃から、地味でこれといって優れたところのない、冴えない女だった。
それなのに、理想だけは高くて、なのに、何の努力もしなくて。
こんな私に彼氏が出来る道理がない。
だから、美紀も、信じないと思った。
「もうっ!いくらエイプリルフールでも、そんな嘘、信じないってば!」
そう言って、笑い飛ばしてくれると思ってたのに…
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