序章

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序章

気がつけば、処刑台に立っていた。 上を向けば綺麗に磨がれたギロチンが、今にも振り下ろされそうだ。 「(二度目の人生も、呆気なかったな。)」 一度、二十代半ばで過労死した私は、二度目の人生を「アシュタル家の一人息子」として生きた。 だが、生まれ変わったその家は父親が犯罪者であり、母親も逆らいたくないらしく私に無関心だった。 …この家に生まれたからには、何もしなくても犯罪者だ。 そう理解した私は人生を諦め、早めに父が捕まるように証拠を捜査員の目の前にぶら下げておいた。 ………上手く隠したつもりだったが、プロの捜査員にはバレていたらしい。 「…お前は、生き延びたいから父親を売ったのではないのか。」 「生き延びたいという気持ちはありません。父が犯罪を犯していると知った時から、のうのうと暮らしていた私自身も犯罪者だと理解していましたから。」 「……そうか。生きたいとは思わないのか。」 「思いません。さっさと殺してください。これ以上の言葉は無用です。」 「では、殺れ。」 その言葉を合図に、兵士にギロチンの下へと押さえつけられる。 目を閉じて、最後の瞬間を待つ。 これで、二度目の人生は終わりだ。神という存在がいるのならば、何故意味のない転生をさせたのかと聞きたいくらいだ。 というか、会えるのならもう1つ伝えておきたいことがある。 何故、記憶を持たせたまま別の性にしたんだ!! これだけは本当に慣れなかったのだ。 一度目は女として生きたのに、二度目は男に生まれてくるってどういうことなんだ! カカカと刃物が上から降りてくる音を最後に、私…いや、俺の人生は終わりを告げた。
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