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翌日
いつものように、私は朝8時10分前に宮殿に入る。今日もいつもと変わらない1日が始まると思っていたのだが、何やら不穏な空気を感じた。私は前から来た騎士団長に挨拶を済ませた後、小声で質問する。
「何か事件でもありましたか?」
「いやね、ジミーさんが辞められるって話なんだ」
「えっ?! 何でですか?」
「分からない……。一身上の都合としか……。王は酷くショックを受けているよ」
「何かプライベートな事なんですかね?」
「ジミーさんはプライベートな事は全く話さないからな……。そういう美学なんだろう。どこで生まれ育ったのかも、結婚しているかどうかも教えてくれない。そもそも自分で全て解決出来るから、相談する必要も無いんだがな……」
「でも、辞められるって相当ですよね。御家族に何かあったんでしょうか?」
「あくまでも噂だが、母親の病状が良く無いって話が挙がっている。ただ、それなら辞めなくても休暇をとれば済みそうな話なんだが……」
「なるほど……。いつまでとかって分かってるんですか?」
「今月一杯だそうだ」
「今月って……あと10日しか無いじゃないですか」
「うむ……」
私は「はぁ」とため息をつき、騎士団長の腰に目をやると、見慣れない三日月の紋章の入った小刀を差している。私は小刀を指差し、騎士団長に質問する。
「それって……」
「ああ、三日月はガルブ国の紋章だよ。4年程前だったかな、ガルブ国の有力武将を倒した証に奪ってきたんだ」
「そうなんですか。さすがですね」
「そうだろう? これは……」
どうやら騎士団長のスイッチを入れてしまったようで、長々と自慢が始まった。私はジミー様の事で頭が一杯だと言うのに……。
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