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男性は土下座までして必死だ。娘を助けようとしている父親にしか見えない。むしろ、嘘であれば優勝者となる可能性があり、望みが叶えられるかも知れないが、それなら娘を手術する必要が無く意味が無い。ザカリー王が言うように、彼だけ特別扱いで娘を救ってしまえば、国民が我も我もとなり、それこそ「嘘つきコンテスト」のようになってしまう。
男性は最後にザカリー王へ一礼した後、部屋を出ていった。私はザカリー王と宮廷の審査員の方々に告げる。
「では、以上を持ちまして……」
その時、ジミー様が右手を挙げたので、私は確認する。
「どうされました?」
「私も参加させてください」
「えっと……何がですか?」
「嘘つきコンテストに参加希望です」
「えっ?! ちょ……ちょっと待ってください……」
私はザカリー王を見る。
「もちろん。参加は誰でも可能だ」
「では……」
ジミー様は徐に立ち上がり、ザカリー王の正面へ回って話し出す。
「実は、トークテーマが『嘘』だと分かった時から、1つの作戦を思い付いていました」
「ほほう、何だそれは?」
ザカリー王は興味津々に質問する。
「私が宮廷を辞めると言うのは嘘です」
ガタン!
「何だって!」
ザカリー王は座っていた椅子を倒しながら前のめりで立ち上がって聞き返した。宮廷の審査員達もざわつく。
「それは本当か?!」
「ええ。私が優勝ですか?」
「いや、ちょっと待ってくれ! 今の発言が嘘なのか?! それとも辞めると言うのが嘘なのか?!」
確かに、今の発言が嘘だとすると、ジミー様が辞めるというのは変わらない。
「辞めると言うのが嘘です。私はこの宮廷に残ります。これからも宜しくお願いします」
「おお~! 良かった……」
ザカリー王は安堵の表情を浮かべ、机にもたれ掛かるように膝を床についた。宮廷の審査員達からも歓声があがる。すると、ザカリー王は何か気付いた表情でジミー様に質問する。
「ジミーよ、一体何が望みだ? 国民が納得するような望みでないと宮廷の人物を優勝者にはできんぞ」
ザカリー王の言う通り、側近に金を与えたのでは出来レース感が漂ってしまう。
「先程の男の娘に、目の手術をさせてあげてください」
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