対立する王国

1/7
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
今日も平和な1日が終わった。私は宮殿を出て、真っ赤に染まった西の空を見ながら、馬車に揺られ家に帰る。馬車の窓ガラスに映る自分の顔を見て、いつの間にか、いいおじさんになってしまったと感じた。 シャルグ国の宮廷に勤めて早25年。秘書官補佐に就任してからは丸2年が過ぎた。先代の王が統治していた頃はライバルのガルブ国と争いが絶えなかったが、2年前、先代の王が病気で亡くなってから平和な日々が続いている。どうも噂では、時を同じくして、ガルブ国の王も亡くなった為、女王が統治しているとの事だ。 現国王のザカリー王は素晴らしい人物だと思う。派手な生活を好まず、戦争を嫌い、税金を半減させ、国民からも慕われている。その理由の1つとして、側近のジミー様の助言が秀逸だという話だ。ザカリー王が40歳で即位した後、程無くして、宮廷内で天才と評判だった30歳のジミー様が側近として大抜擢(だいばってき)された。宮廷で高い地位の役職に就く人達は、王族の親戚等が多いというのに、身元のハッキリしていないジミー様は能力だけでザカリー王に見初(みそ)められたのだ。減税の政策を含め、鎖国状態であった海外の文化も取り入れ、経済も上昇している。最も素晴らしいのはガルブ国との戦争が無くなった事。平和な日々が続くのはジミー様の手腕が大きいのかも知れない。 国民がザカリー王を親しみやすいと感じるのは、何と言っても、毎月行われるトークコンテストによるものが大きいだろう。国民が王様と話をする機会などそうそう無いが、トークコンテストでは1対1で話を聞いてもらえる。ザカリー王の前で披露するトークコンテストは先々月から開催されており、私も審査員の1人に選ばれているのだが、基本的にはザカリー王が優勝者を決める。第1回は「面白い話」、第2回は「怖い話」、そして先日、第3回のテーマが発表された。トークテーマは「嘘」。ザカリー王を最も騙した者が優勝となる。賞品は純金1㎏か、何か1つ好きな望みを叶えるかを選べる。好きな望みと言っても、ザカリー王は神様では無いので、透明人間になりたい等というような、物理的に不可能なものは無理だし、王様になりたい等というような無茶な要求も当然ダメだ。まあ、1日王様を交代等の望みは叶えて貰えるかも知れないが……。家や土地等の、純金1㎏より高価なものを希望するのが理想だと思うが、2大会共、優勝者は純金1㎏を希望した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!