一匹狼と騒がしいキノコたち

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月の形がもう爪の先ほどになった頃。 森の奥にそびえる高い山の方から、銀色にキラキラ光る小さな流れ星のようなものが森に降って来た。 と・・・よく見ると、それはカルムに連れ去られた子リスだった。 子リスの体は、神さまの使者の(しるし)に銀色に輝いて、闇に包まれた森をほのかに照らし出した。 子リスは皆の心に届く超音波のような明瞭な声で、こう言った。 ★  ★★★  ★★★  ★ 間もなく世界に革命が起こります。 革命を起こすのは、皆さんの祈りです。 一人に一つずつ平等に与えられた命について、落ち着いて、けれど速やかに考えてください。 自分の命について。 みんなの命について。 たった一つだけ祈ることができるなら、あなたは何を祈りますか? 一つだけです。 一つの強い祈りを、心の中で念じて下さい。 その祈りを、明確な短い言葉で、繰り返し心の中で唱えて下さい。 月が完全に見えなくなっている間、真剣に祈り続けることができたなら、あなたの祈りは必ず、天に届きます。 ただし、欲張った迷いに満ちた思いは泡になって消えてしまいます。 迷いのない明確な短い言葉で、一筋に祈り続けた言葉だけが天に届くのです。 その祈りの束が世界を変えるのです。 この星の運命を決めるのは、皆さんの祈りです。 皆さんの命こそが、この星の命なのです。 皆さんが、命について、どんな思いを、どんな言葉で、どれだけ真っ直ぐに祈ることができるか。 その祈りのエネルギーは真の暗闇の中で天体のベールとなり、この星を(まも)る大いなる意思に変革するのです。 あの高い岩山の上にある月を、ご覧下さい。 間もなく皆既月食が始まります。 月食が始まると同時に、カルマの遠吠えが聞こえることでしょう。 遠吠えが聞こえたら、一心に祈りを捧げて下さい。 どんな祈りを捧げたらいいか考えつかない方は、こう祈って下さい。 「この星のすべての命の幸福のために自分の命を捧げます」 ★  ★★★  ★★★  ★ 「まあ、どうしましょう!」 「自分の命を捧げるって?」 「すべての命の幸福を祈ります・・・それでいい。俺はそうする。」 「私はみんなの命が幸せであることを祈ります。」 「どうなのだろう?自分の命を捧げるってのは、誰かの役に立ちたいという思いだろう?ボクはそう祈るよ。」 「確かにそうかもしれない。別に命を捧げると祈っても、すぐに命を失うことはないだろう。この星に生まれたからには、この星のために命を捧げるのは当然のこととも言える。」 おしゃべりなキノコたちが、戸惑ってガヤガヤ話し合っている間に、もう月の光は今にも消えようとしている。
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