一匹狼と騒がしいキノコたち

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その時から、およそ1ヶ月の時が流れた。 サルノコシカケ爺さんは、人が変わったように親切になった。 誰より長生きしてきた経験と知恵を、惜しみなく皆のために役立てようと自ら声を発するようになった。 ある日、小鹿が真っ白で美しいドクツルタケを見つけた。 ドクツルタケには、たくさんのナメクジや虫が集まり、皆、楽しそうに歌いながら、そのフワフワした真っ白い傘を食べている。 それを見た小鹿は 『みんな、あんなに美味しそうに食べている!ボクも食べてみよう』 とドクツルダゲに近づいた。 その時、サルノコシカケ爺さんは、優しく小鹿に教えた。 「ダメダメ!そのキノコは虫のためのご馳走だ。おまえさんが食べると死んでしまう。おまえさんは、その奥にあるべニテングタケを食べるがいい。美味いし、体の調子を整えてくれるよ。」 そう言われたドクツルタケは、以前のように森の仲間を傷つけることなく、おとなしくなって、ぼんやりしていた。 そのため、多くの虫たちが集まって、ドクツルタケの真っ白い傘の上は毎日、楽しいランチパーティーが開かれるようになった。 みんなに愛されていた丸くてふくよかなシイタケは、相変わらず細やかな気遣いで森のみんなを喜ばせていた。 「山鳩さん、お元気ですか?」 「おかげさまで。あの後、可愛いカノジョもできて楽しい毎日を送っています。」 若い山鳩は、首を振り振りシイタケにカノジョを紹介した。 「よろしくお願いいたします。」 山鳩のカノジョは、シイタケにお辞儀をした。 シイタケは森の変化を歓迎していた。 ほんの僅かではあるけれど、みんなで幸せに向かって一歩、近づいたような気がした。
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