一匹狼と騒がしいキノコたち

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ある夏、シトシト雨が降り続き、森のいたるところに様々な種類のキノコが大発生した。 キノコたちは、とてもオシャベリ好きで、動物が近くを通ると、アレコレ話しかけた。 「おーい、ウサギ。どうしてそんなに耳を長く伸ばしてるんだ?」 「どんな音も聞き洩らさないためですよ。何しろ私たちには鋭い爪や歯がないし、戦うためのどんな武器もないんです。危険を音で察知して、危険から遠ざかる以外に生き延びる方法がないのです。」 「おーい、リス。どうして頬っぺたに木の実をたくさん貯め込んでるんだ?」 むぐむぐ もぐもぐ ぐぐぐ・・・ 「ごめんよ、木の実がこぼれるから口を開けないんだね」 「あらミミズさん。あなた頭はどっちなの?」 「色が違う輪がある方さ。」 「何なの?その輪って?」 「大切なものを作る場所さ」 「あらま。そこ、よく見たいから、ちょっとバックして。」 「ボクはバックできないんだ。前に進むしかできないんだよ。」 「あら?グネグネ自由に動けるのに?」 「足の役割をするトゲの向きが前にしか進めないようになってるんだ」 「まあ大変!神さまは何を考えてるのかしら?」 「キミたちキノコには足さえないじゃないか!」 「ふふふっ・・・私たちに足はいらない。生きていく上で移動する必要なんかないんですもの。」 こんな調子でキノコたちは、あちらでもこちらでも森の生きものたちに話しかけるので、みんなだんだん、ウンザリしてきた。
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