1.性に身体はつきものか?

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微妙な静けさを打ち破ったのは私。 『…しないの?』 これは不安感からだったように思う。 身体を求められないと、自分の存在価値を分からなくなってしまっていたのかもしれない。 それほどに、私にとって「男性は女を抱きたいもの」なのだ。 照明は落とされ、矢野の輪郭が不鮮明になる。 馬鹿げた質問をしてしまったことにドキドキしながら、彼の言葉をジッと待った。 するとゴソゴソと布団の擦れる音がして、影がゆらりと私を覆った。 矢野が身体を起こしたのだ。 静かな衝動に身体が震える。 息がかかるくらいの距離感で、耳に届いたのは矢野の声。 「キスだけ、していい?」 質問に、質問で返さないほしい。 だって矢野の真意が全然読めない。 『聞く?そんなこと。』 私も私で誘うみたいな受け答えをしてしまったのは、強がりからだろうか。 キスというキーワードごときで、何をこんなに動揺しているのだろう。 それほどに、心臓はバクバクと期待と不安を含めた動きを見せている。 『…っ、』 OKサインを出したのは私。 伸びてきた男の手が頬をするり、撫であげてそこから熱がじんわりと広がる。 それを合図に目を閉じて、角度をつけたキスに応じた。 応じてしまったのだ。 この瞬間、矢野と私は弱みを握られた同期の関係から、秘密を共有する相手になってしまった。
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