1.性に身体はつきものか?

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中学生の頃にした触れるだけのキスとも、大学生の頃にした相手を喰うようなキスとも違う、矢野との時間。 彼の唇が、器用に私の上唇を挟んで甚振る。 『っ、』 ___読み違えたのかもしれない。 矢野のキスは、ある種の中毒性が、あるらしい。 優しいのに、焦ったい。 これだけ心臓を激しく動かすのに、決して奥には踏み入ってくれない。 弄ぶようなキスに、背筋を震わせた。 動揺する心に反して、下腹部がキュウキュウと期待を始めた。 このまま手が首を撫で、シャツの中に忍び込む。 そして… そんな妄想ばかりを捗らせて耐えられなくなった私は、受け身だったキスの主導権を奪おうと身体を矢野に擦り寄せた。 これは、もっとして欲しい、の合図。 「_、」 しかし、意に反して矢野の顔は私からゆっくり離れていってしまった。 『あ…。』 「キスで満足。おやすみ。」 『!?』 満足…? 私はこれだけ昂り期待しているのに…? そんな私の赤らめた表情も、この暗い部屋では伝わらないのだろう。 矢野はくるりとこちらに背を向けて、なんの未練もないかのように布団に潜った。 ほっぽり出された熱だけが宙ぶらりんになっている。 男のベッドにいて、黒レースの下着を見られることも触れられることもないまま、背中合わせで眠るというのか。 『…。』 心がざわめく。 今までの男の人と違う感触がする。 どうしてなのだろう。 私はこのいつもと違う違和感の正体がなんなのか、分からないでいた。
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