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打合せは1時間弱で終わった。
ノートパソコンと手帳、ペンケースを持ってミーティングルームを出る。
『有馬さん同席ありがとうございます。』
「うん、随時報告してね。」
新しい仕事は楽しい。
これが、矢野と一緒でなければもっと気楽に楽しかったかもしれないが…。
そう思い、ふと矢野の方に目を向けると、彼はちょうど口を開いた。
「お二人、仲良いですね。」
ざわ、___毛が逆撫でされるような嫌な感覚に襲われる。
突然、何を言い出すんだ?
わざわざそんな事を言うなんて、表面的なその言葉の裏側に一体何を隠しているのか。
何か言わねば、と心は焦るのに上手く言葉が出てこない。
「仲良いですねって、俺もう8年目よ?一応室長なんだけど…これはなめられている…。」
すると、自然な間で有馬さんが冗談ぽく口を開き、眉間に皺を寄せた。
関係を感じさせない流石の立ち回りにも、今の私はヒヤヒヤせざるを得ない。
『えっ、仲良いで良いじゃないですか。』
「嘘ウソ、うちの室はみんな仲良いよ。」
「羨ましいです。」
「確かに企画室は結構曲者多いからな…。あ、これオフレコね。」
ごめんなさい、有馬さん。
矢野は私たちのことを知っているのです。
…とは絶対に言えないが、心の中で小さく謝罪をした。
「俺、営業フロア行ってから上戻るわ。お疲れ様〜。」
『お疲れ様です。』
「お疲れ様です。」
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