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2.我慢するのが正しいの?
『…ということがありまして。』
「会社の同期に上司と関係持ってるのバレるって、なんのイベントよ。』
目の前でゲラゲラと笑い転げているのは、大学時代の先輩の広瀬夏帆。
学科は違えど同じ大学の先輩で、ナイトクラブによく出入りしていたことをきっかけに、一緒にいることが多くなった。
若さを振りまいて、ギラギラした夜遊びも男遊びも一緒に経験してきた。
褒められたことではない楽しみを共有した私たちは同級生たち以上に仲良く、そして互いの黒歴史もよく知っているのだ。
大学卒業後も時間を作りこうやって集まっては、淀んだグレーゾーンの女子トークを繰り広げている。
「はあ〜響子はやらかすの得意だねえ。」
『失礼な…。』
「会社にそんなゴシップ落ちてるの、楽しいだろうなあ。うちなんて4人しかいないアトリエだしさ。上司〜とか、同期〜とか羨ましいよ。」
アトリエ系建築事務所に勤務している夏帆さんは、内装デザインや空間演出やを仕事にしており、家具メーカーであるiriaとも交流がある。
「有馬さん、いい男だしね。仕事してたら分かるくらい色男。あれはモテるだろうしライバル多いよ。」
一緒に企画開発をしているシリーズの家具もあるため、彼女はiriaの商品部のメンバーをよく知っているのだ。
『ライバルってか…、別に好きとは言ってないですよ。』
「素直じゃないなあ。」
「で、その同期はどんな人なの?」
夏帆さんが飲み干したコーヒーのカップをカチャンとテーブルに置いて尋ねてくる。
興味津々、と言った表情で聞くものだから私は渋々と口を開いた。
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