141人が本棚に入れています
本棚に追加
『どんな…普通の同期ですよ。』
頭に矢野を思い浮かべる。
細身な身体、切長の瞳。長めのゆるいパーマで遊んだ髪、と思い浮かんだのは外見ばかりだ。
私はどうやら矢野のことを何も知らないらしい。
「それにしても、なんで響子を揺さぶるようなこと言ってきたんだろうね。」
『それは私が知りたいんですけどね。』
俺とも遊んで、だなんてふざけたことを言って、私に要求するのは身体でなくゲーム相手なのだ。
「まあ、気があるからなんだろうけどさ。」
『いや…、そんな素振りなかったんですけどね。』
普通に考えたらそうなのだろうけど、矢野の態度に私への色気は見られなかったからますます厄介で。
何を求められているか分からないだけに対処のしようがない。
「でも、その同期にバレたならほどほどにしておかないとね。響子のとこダメなんでしょ?そういうの。ちょっと遊びも控えどきなのかな?」
『うう辛辣…。』
きききと夏帆さんは声を出して笑う。
他人事だからだろう、夏帆さんはとても楽しそうで、どこか意地悪げだ。
でも、本当にその通りで、彼女のいうことは正しい。
遊びは遊びのまま、どこにも迷惑かけぬまま終わらせなければならない。
「進捗聞かせてよね。また、シリーズの打合せに行くとき、2人の様子チェックしちゃおーって。」
『うちの会社で遊ぶのやめてくださいね。それで、夏帆さんは最近どうなんです?』
私が夏帆さんに話の矛先を向けると、彼女はきらりと目を輝かせて口角を上げた。
こうなった夏帆さんは誰にも止められないな、と、自分にあった出来事は頭の中にしまい込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!