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「最近、会う頻度減ったから、寂しかった。」
自宅の最寄駅を2つ通り過ぎて電車を下り、間違うことなく西出口を左に行く。
初めて、この道を通った時は2人だった。
刺激的な道はいつの間にか私の当たり前になり、今となってはたった1つのメッセージで簡単に1人で歩めるようになってしまった。
チャイムを鳴らしドアが開くと、目が合うよりも早く有馬さんの匂いで身体がいっぱいになる。
嘘つき、とは言わないままキスを受け入れたのは、玄関先でのことだ。
寂しくなんかないくせに。
ちょっと日が空いたから、溜まるものが溜まっただけでしょう。
『こら、手が早すぎます。』
しかし、そんな水を差すようなことは言わない。
私だって、有馬さんが欲しくなった。
貴方の身体が恋しくなったのだ。
つまり、利害はどこまでも一致しているのだから。
「早く、したい。」
有馬さんが顔を上げて、ここでようやく視線が触れ合った。
元より色気を帯びた彼の、濡れた瞳が私を捉えて離さない。
途端、背中にゾクゾクと走る期待感。
ああ、そう、私が欲しかったものはコレだ。
ふしだらな欲求を隠せない表情、手つき。
脱いだ靴は手で揃えられることなく、明後日の方向を向く。
私は背負っていたリュックを肩から外す暇すら与えられぬまま、身体を手繰り寄せ合いながら寝室になだれ込んだ。
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