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涼しげな夏服たちが花びらのように床に散らばる。
薄着になるにつれて体温が上がっていくのを感じる。
矢継ぎ早にキスして声を漏らし、そしてキスして。
顔も身体も逃れることを許してはくれない。
『待って、』
「待たない。」
こんなにも余裕のない有馬さんを見るのは初めてのこと。
私に、私の身体にそんなに会いたかったのだろうか。
『っ…!』
するり、私のとは違う形の指が下着の中に滑り込んだ。
触れられた場所から、弾けるような刺激が走ってゆく。
快くて快くて、もどかしくて堪らなくって。
もっと奥深くへの繋がりを求めようとしたその時だった。
「他に、男が出来たの?」
有馬さんの声を低くした問いかけにドキッとしたのは。
快楽に思考を手放しかけた途端、頭に浮かんだのは、矢野のこと。
やめてよ、せっかくの有馬さんとの行為中に出てこないで。
私の男でも何でもないのに。
『そんな…意地悪言わないで。』
イエスでもノーでもない返答をし、あそびを残して話題を逸らす。
これは、私のことを好きでもないくせに思わせぶりなことを言う彼への仕返しでもあった。
有馬さんには、勿論矢野のことは言っていない。
バレたなんて知られたら絶対に有馬さんは私から離れるだろう。
私がどれだけ引き止めても、会社の立場や仕事を奪うことは出来ない。
…泥沼に引き入れたのは、そっちのくせに。
『…っ!』
遠慮がちに足を開くと、身体が壊れてしまうのではないかと思うほどの激しい快楽に襲われた。
密着した肌がどちらのものか分からない体液で汚れていく。
私はこれが好きなのだ、と余計なことは全てシャットダウンして、いつもよりも大胆にはしたなく有馬さんとの時間に没頭した。
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