2.我慢するのが正しいの?

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『ねえ有馬さんって、好きな人いるんです?』 声になった自分の言葉を聞いてから、後悔する。 深い意味は無いのに、それはとても重くてイヤらしかった。 好きな人の有無なんて、セフレが聞くなんてタブーなはずだろう。 そんな初歩的なこと、学生の頃に学んだはずなのに。 「なんてこと聞くのさ。」 有馬さんはキョトンと大きな目をさらに丸くして、質問で返す。 決して困った顔しないところが彼の優しいところであり、私に深入りしてない証拠であろう。 『いや、そういえば知らないなって…。』 語尾がどんどん小さいものになるのは、自然にと次の話題を探すからだ。 しかし有馬さんは、 「世良ちゃんのこと、好きだよ。」 だなんて、ふざけたことを躊躇いなく言う。 やはりこの人は酷い人だ。 何回も抱いた女に告白することもなく、簡単に薄っぺらい好きを吐くなんて。 『…綺麗な嘘ありがとう。』 だから、私も丁寧に笑顔を作って返事をしたが、嫌味のようになってしまった。 悔しい。 馬鹿みたいに手放しで喜べないことも、「じゃあ付き合ってよ」と怒れないことも。 「ひどい、嘘じゃないのに。」 なんだかムカムカモヤモヤと心の中が汚れていくのが分かる。 私はまだまだ子供なのかもしれない。 誰も得しないこんな話は早々に切り上げて、もう全然眠たくもないのにベッドに潜り込んで目を閉じた。
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