139人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
明るいこの部屋できちんと顔を向き合ったのは、初めてかもしれない。
綺麗な黒髪なのに、意外と色素の薄い目が照明の光を受けて深いところに煌めきを帯びていた。
「世良、俺と付き合って。」
?
突然の出来事、息が止まるくらいに私を驚かせたのは、前置きなくストレートに振ってきた声。
それは、矢野ってかっこいい顔してんだな、と呑気に構えていたところに訪れた衝撃だった。
『…、?』
内容が何も理解出来なくて頭で反復してみるが、やはり上手く処理は出来ない。
雑多な匂いが混じり合う部屋に少し続いた沈黙を破ったのは、矢野の方。
「有馬さんなんか、捨てて、俺のとこ来てよ。」
私の認識が間違っていなければ、これは告白だ。
矢野から私への、愛の告白。
言葉の内容だけを見れば、好きと言っているのでしょう。
それは紛れもなく事実なのに、チラリ、疑問の点が頭をよぎってゆく。
点は2つ生まれると線になるし、3つになると面になる。
そして私の違和感は、ある1つの仮定を生んだのだ。
『…ごめん。間違ってたらごめんなんだけど、』
間違っていたら、すごく失礼なことだ。
告白をしてくれた相手に、こんなことを言うのはおかしいようにも思う。
それでもこの違和感を見逃せなかった。
確かに私に告白した男からは、1mmも、女へ向けた好意を感じることが出来ないのだ。
『矢野って、有馬さんのこと好きなの?』
最初のコメントを投稿しよう!