3.好きの形はひとつだけ?

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「は…?」 「俺…、世良に告白したつもりだったんだけど。」 みるみるうちに変わっていく形相。 隠せていない動揺。 『私、…それなりに男性経験あるからなんとなく分かっちゃう。相手が私に…好意を抱いてるかどうかくらい。』 矢野の反応に、ちらついていた疑問が、どんどんと確信へと変わっていく。 『矢野、全然私のこと興味ないんだろなとは思ってて。じゃあなんで、私の相手をするのかをずっと考えてた。さっきの一言で、気付いた。』 “あの子、LGBTQ?。元カノにね、お前なら好きになれると思ったけど、好きになれなかった、ごめん。って言ったらしくて” 夏帆さんからあのとき聞いてしまったことは、矢野を傷付けることになるかも知れない、と言わないでおく。 『___有馬さんから、私を引き剥がそうとしてるのかなって。』 「ばか、じゃねえの?突拍子もない…、」 その表情はまるで、花瓶を割ったことを隠す子どものようだ。 私が凄く嫌な女だというのは分かって、それでも問うのをやめられなかった。 『人って嘘つく時左上に視線が泳ぐんだよ。ほら、心臓はやい。』 そっと矢野の胸元に伸ばした手から、バクバクと心臓音が響く。 彼は私の手を振り解いて、ひどく傷付いた表情を浮かべた。 結局私は矢野を傷付けてしまっているのだろう。 不謹慎だが少しだけ、見惚れてしまった。 私の前でいつも上っ面の笑みを浮かべていた彼の、初めて見た本当の顔だったから。
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