139人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「は…?」
「俺…、世良に告白したつもりだったんだけど。」
みるみるうちに変わっていく形相。
隠せていない動揺。
『私、…それなりに男性経験あるからなんとなく分かっちゃう。相手が私に…好意を抱いてるかどうかくらい。』
矢野の反応に、ちらついていた疑問が、どんどんと確信へと変わっていく。
『矢野、全然私のこと興味ないんだろなとは思ってて。じゃあなんで、私の相手をするのかをずっと考えてた。さっきの一言で、気付いた。』
“あの子、LGBTQ?。元カノにね、お前なら好きになれると思ったけど、好きになれなかった、ごめん。って言ったらしくて”
夏帆さんからあのとき聞いてしまったことは、矢野を傷付けることになるかも知れない、と言わないでおく。
『___有馬さんから、私を引き剥がそうとしてるのかなって。』
「ばか、じゃねえの?突拍子もない…、」
その表情はまるで、花瓶を割ったことを隠す子どものようだ。
私が凄く嫌な女だというのは分かって、それでも問うのをやめられなかった。
『人って嘘つく時左上に視線が泳ぐんだよ。ほら、心臓はやい。』
そっと矢野の胸元に伸ばした手から、バクバクと心臓音が響く。
彼は私の手を振り解いて、ひどく傷付いた表情を浮かべた。
結局私は矢野を傷付けてしまっているのだろう。
不謹慎だが少しだけ、見惚れてしまった。
私の前でいつも上っ面の笑みを浮かべていた彼の、初めて見た本当の顔だったから。
最初のコメントを投稿しよう!