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「随分うるさい打合せだな。」
フリースペースのビッグテーブルに資料を広げて、やいのやいのうるさくしていたからだろう。
『有馬さん…』
悪い意味で熱くなった私たちの元に声をかけてくれたのは、有馬さんだった。
椅子に浅く腰掛けた。
「すみません、声が大きかったですね。」
有馬さんは椅子に浅く腰掛けて、矢野と私を交互に見て面白おかしそうに眉を下げる。
ドキッとした。
優しく眉を下げるその表情を、私はよく知っている。
上司と部下の関係性以上のところで、知っている。
「コテンパンに言われてたもんな。聞きながら、世良泣くなよ〜って思ってた。」
『もう、3年目なので…。』
この状況…。
有馬さんと私、と、矢野。
以前なら何も思わなかった3人の空間が、今となってはとても特異なものと感じてしまう。
矢野は、大丈夫なのだろうか。
気付かれないようにチラリと矢野を見ると、彼は上っ面のすまし顔で。
秘密を暴かれたあの夜のような顔色は一切現れていない。
「見ていただけます?」
そうだ、ここは職場。
情けないな、私情を持ち込まないと決めたのは私なのに。
「捕まりに来たのは俺の方だよ。」
有馬さんは私のセフレである前に、矢野の想い人である前に、
優しくかっこいい憧れの上司だ。
『定時後にすみません。よろしくお願いします。』
現を抜かすならこの場以外で関係を結ぶ資格はないよ、と自分に言い聞かせ、
私はスケッチブックと価格表をビックテーブルに広げた。
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