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オフィスに2人しかいないからって、随分と気を許してくれたものだ。
私は秘密を暴露す者ではなく、秘密を共有する者だと思ってくれたのだろうか。
『有馬さんのさ、どこがいいの?』
「何、急に。」
『いや、ふと思っただけ。ほら、女遊びしてるのは、…私を例に分かってることじゃん。』
モテる有馬さんはきっと、私以外にも女がいるだろう。
聞かないが、肌感で分かる。
付き合うと言う選択肢を取らず都合よく女を遊びに使う男を、矢野はなぜこんなにも純に好きなのかと疑問に思ったのだ。
「そんなのなー…、世良はよく知ってるだろ。」
『?』
矢野は、何を今さら、と言わんばかりに苦く微笑んで、有馬さんへの好意を語る。
「俺よりずっと近くで、有馬さんの仕事見てるじゃん。あんな優秀なデザイナーいないよ。モノを見ても、人間みても。」
『仕事出来る男が好きなの?』
そうか、それは確かにそう。
私にとっても矢野にとっても有馬さんは上司。
私だって、男女の関係になる前のそこには憧れがあった。
「そりゃあ、それが1番かっこいいじゃん。」
仕事の話をするときとはまた違う、目の輝きを見せる矢野が眩しい。
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