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近場でこと済ますのは、1番タチの悪いパターンだと過去の経験が言う。
危ない橋というだけで、良いことは1つもない。
今更猛省したって遅いのだけれど。
有馬さんと身体の関係を持って半年、季節は2度も3度も変わっていった。
決して褒められることでないこの逢瀬はずるずると形を変えずに続いている。
相性と都合が、どっちも適度にちょうど良いのだ。
私にとって、そして有馬さんにとっても。
抱いているものは、好意に似ていて少し違う。
付き合いたいわけでも手に入れたいわけでもない。
どこか感じる彼の影に潜む女の匂いに、嫉妬しないくらいには。
そういえば、まともな恋を最後にしたのはいつだっけ。
誰かを好きになるって、どうすれば良いんだっけ。
『…。』
「百面相。」
有馬さんが手の甲で優しく頬を摩る。
人肌がこんなにも心地良いことを思い知る。
『ちょっと難しいこと考えてました。』
「なに?」
『好きとか嫌いとか、そういうの。』
彼の手を自分の指を絡め取り、寝ぼけた顔や綺麗な二重瞼に唇でやわい刺激を与える。
以前、女性誌の記事で『寝起きにキス出来る相手が本当に好きな相手』と書いてあったことを思い出した。
それが本当なら私は紛れもなく有馬さんを好きということになるが、やっぱりピンと来ないので、思考を止めて布団の中に手を伸ばし自分の欲を優先させた。
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