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夕方から始めたバーベキューでは、もうすっかり出来上がってる人もいる。
私自身、はしゃぎつかれて身体は心地よく、気怠かった。
夕日が沈むのを眺めながら、肉を焼き酒を飲む。
雑多に先輩後輩が入り混じる空間なのに、こんなときにも隣にいるのは矢野だった。
「ねえ世良、森川さんめちゃくちゃ飲んでる。弱いくせに。」
『良くない流れだな…。あんたのとこの先輩でしょ、止めてあげなよ。』
こういうときに同期で固まるのは良くないのかもしれない。
しかし、幹事の名の下で明日の予定などを軽く話しながら、もうぬるくなった缶チューハイに口付けるのはどうも心地よかった。
矢野が私に心を許してくれたからだろうか。
互いの秘密を共有しているだろうか。
私たちの間には、去年の夏とは180°違う時間が流れる。
「おい!矢野ー、こっち来いよ!」
噂をすれば、私たちの2つ上の先輩である森川さんがゲラゲラと矢野を呼んだ。
この宴はきっと夜中近くまで続いて、明日には二日酔いの人も出てくるだろう。
その事を察しながら、苦笑いで矢野に「行っておいで」の意で頷いた。
「無視しよう。」
しかし矢野は、この場から離れようとしない。
私なら、仕方ないなあと先輩の元に向かうけどな、と首を傾げる。
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