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『いいの?』
「めんどくさいからね。世良と一緒にいる。そっちのが楽しい。」
とん、と小さく心臓が跳ねるのを身体で感じた。
そうさせたのは、紛れもなく矢野の屈託ない笑みだ。
この人たらしめ。
そう思いながらも悪い気がしないのは、少なからず私も矢野と一緒にいるのが楽しいからだろう。
『悪い後輩だな。私だったら行くけど。』
「世良は森川さんのタチの悪さを知らないんだよ。ばーか飲まされるから。」
私からは、矢野が好きで堪らない有馬さんの話は振らない。
矢野が「世良といる」ことを少しでも大切にしてくれているなら、その時間はあの人にあげたくないと思った。
この感覚は、中学の頃に味わった、仲のいい友達に知らないコミュニティの話をされたくないという種の嫉妬に似ている。
そうか、相手を知るってのは情を持つと同義なのか、とアルコールの入った緩い頭で思った。
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