141人が本棚に入れています
本棚に追加
***
学生の頃みたく若くない私たちは、夜通し遊ぶことなんかもう出来なくなっていた。
男女別のコテージで風呂を済ませ、酔いに身を任せて皆が眠りについたころ、私は何となく眠れなくなって外に出る。
『あっ、有馬さん。』
「世良ちゃん。」
コテージから少し離れたベンチに、有馬さんの姿があるのが分かった。
会社の集まりということもあり、海でもバーベキューでも、彼と私が近くにいる事は無かったから、なんだか久しぶりの気がする。
声をかけると有馬さんがヒラヒラと手を振るものだから、私は遠慮がちに隣に座った。
『何してるんです?』
「酔い覚まし。俺飲んだ後、なかなか眠れなくって。」
『寝てくださいね、明日運転なのに。』
隣にはいなかったけれど、有馬さんがビールを飲んでいたことも、酔って饒舌になっていたことも、知ってる。
見ていたから。
周りに気を配るフリをして、どこか目で追ってしまっていたから、知ってる。
好きとか嫌いとかではなくて、深くまで知っている相手のことは嫌でも目につく、そういうものだと思う。
「わー辛辣。」
「今日全然喋ってない気がする。他の室と交流出来た?」
喋ってないのは有馬さんも避けてたからでしょ、とは流石に言わない。
『あー、でもずっと動いてました。幹事だし。』
2人きりなのに上っ面で話す感じがどこか気持ち悪くて、隣に座った事を少し後悔する。
普段なら、2人きりはセックスをする合図でもあるから。
最初のコメントを投稿しよう!