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「週末は幹事お疲れ、ありがとね。」
『いえいえ、ありがとうございました。でも森川さんはもうお酒禁止ですよ。』
お盆休み、9月にある決済を前に、仕事は徐々に忙しさを増してゆく。
合宿に参加したメンバーは皆、若干日焼けをして、いつもの業務に戻った。
瞬間的に波を立てた心も、落ち着きを取戻していた。
軽く肩を叩いたのは森川さん。
舌を出して先輩を揶揄うと、彼は大きく肩を落として見せた。
「えっ辛辣…、でも金曜アレあるじゃん、飲み会。」
『あっ、アトリエワンとの懇親会ですよね。』
そうか、今週末は懇親会という名の飲み会だ。
一緒に商品開発をする協力先であるアトリエワンと、iriaの企画部との懇親会。
アトリエワンは代表も素敵な人であるし、大学時代からの友人、夏帆さんも来るため、仕事での飲み会にしては楽しみな会である。
うちの室からは、室長有馬さん含め3人が参加する予定だ。
『協力先の前で煽るようなことしたら、先輩相手でも流石に手出しますからね…。』
「俺のことなんだと思ってるの…。企画は室長の岸さんと矢野と俺よ。真面目メンバーでしょう?」
『そう、なんですね。』
ああ、矢野も来るのか。
夏帆さんには申し訳ないけれど、あまり会わせたくない気がした。
彼女から聞いた噂話が私の中で形を変えてしまった今、私は誰に対しても首を縦に振るのは難しいだろう。
最近、心がずっと難しい。
言葉にし難いモヤモヤに、心の片隅を徐々に支配されている気分だ。
先程までは楽しみだと思っていたけどな、と、ほんの少しだけ気が重くなり、
軽口を叩いていた森川さんの背を見送ってから少し濁息を吐いた。
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