4.ホントのことは言えぬまま

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「お疲れ様ですー!」 週末のアトリエワンとiria商品部の懇親会は、駅前のミートバルの貸切スペースで行われた。 アトリエワンからは夏帆さん含め3人が参加され、10人程度の大きな会になった。 お堅い接待などでは決してなく、ものづくりをする者同志の仲間意識もあり、場とてもはフランクな雰囲気だ。 お酒が入っていることもあり皆上機嫌で、仕事の話もするがそれ以外の話も進んでいく。 「有馬さんは、独立とか考えられてるんです?」 アトリエワンの代表が、有馬さんに話題を振った。 その内容に、私はピクリと耳を傾ける。 この手の話を有馬さんとしたことはなかった。 上司ということもあり、若手同士で夢を語り合う時のようには突けない話だからだ。 私たちデザイナーは、皆1度は自分の事務所を持つことを考えるだろう。 アトリエワンの代表も、5年前に大手事務所から独立し、アトリエを設立したと言う。 有馬さんは優秀なデザイナーだ。 メーカーで実績を積んで7年、引き抜きもあるだろうし、独立も考える歳だと思う。 なんて答えるのだろう、と少しそわそわしながら有馬さんに目を向けた。 皆に注目された有馬さんは照れを隠すように、手元の白ワインをコクリと飲んでから口を開いた。 「
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