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お手洗いで鏡に映る自分の顔には、少しの陰りがあった。
懇親会に背を向けた瞬間から、キープしていられなくなった笑顔。
『いや、…誰だよ私。』
酷いな、私。
有馬さんの彼女でもなければ、矢野の彼女でもないくせに。
『はあ。』
私は誰のためにダメージを受けているのか。
情けなくて自然とため息が漏れ出る。
ポーチからフェイスパウダーを取り出して、滲むダメージを覆い隠す。
気を取り直して口角をあげ、席に戻る前にと徐にiPhoneを開けると、2つのメッセージが届いていた。
1つは、終業後に送られてきたもので、もう1つは、たった今送られてきたもの。
キリリと心臓が締め付けられたのは、並ぶ送り主の名を見たから。
有馬「今日、一緒に帰ろう」
矢野「今晩泊まりに来てよ」
違う相手からの酷似したメッセージに、身体が震えたのが分かる。
『金曜だからって、どれだけ都合いいんだか…。』
こんなの両方断りなよ、と少しの理性が語りかけるのに、
有馬さんからの懇親会が始まる前に送られた誘いも、私がお手洗いに立ってる間に矢野から送られた誘いも、
何故だろう、いつもより濃いものに思えてしまうのだ。
『、』
酔いは私を寂しがり屋にさせるらしい。
1人、ふやけた頭で答えを出した私は、片方のメッセージを既読のままスルーして、もう片方のメッセージにだけ返信を送った。
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