141人が本棚に入れています
本棚に追加
『…何が目的?』
「物分かり良すぎない?」
手のひらでギュッとスカートの裾を握り、力み捻り出した質問には、質問で返ってきてしまった。
まるで会社でデスクを囲み、家具の企画を出しているときみたいな物言いだ。
ざわざわと心が蠢くが何も発せず、口を噤んで矢野の出方を待った。
すると、彼はようやく私としっかり目を合わせた。
飲み込まれるくらいに真っ直ぐな視線に、ドキ、と小さく心臓が動く。
今まで知らなかったけれど、矢野の切長の瞳の奥はこんなにも漆黒なのか。
「俺とも遊んでよ。世良のこと、タイプなの。」
吐き出されたのは、冷たい空気を揺らす発言。
私はごくんと喉を鳴らして息を呑み込むしか出来なかった。
矢野に対しヤラシさを感じない、のは勘違いだったらしい。
悪魔みたいな笑みを口元だけで浮かべた矢野から、初めて男の匂いを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!