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四.
中学生になって、少ししっかりしてきたように思えた。
年頃の男子よろしく、自分の部屋で一人で何かに没頭していたり、演劇部でできた友達と遅くまで遊んで来るようにもなった。
とは言え、やっぱり私がどこかに出かける時には、寂しげな顔をして見詰めてくるので、
「大丈夫だよ、すぐ戻るから。いつも一緒よ、これからもずっと、ママは翔宙と一緒にいるよ」
いつもそう笑い掛けていた。
だけど、なのに、ごめんなさい。
私はその日、朝市の野菜を買い過ぎてしまって、自転車の前のカゴも後ろのカゴもいっぱいにしてしまって。
不安定にふらつきながらも、必死に坂を登り切った自分に、
「偉いぞ、すごいぞ、あたし」
なんて自画自賛しながら、住宅街を抜けるなだらかで曲がりくねった坂道を快適なスピードで下り始めて。
脇道から出てきた車を避けようとして切ったハンドルが思った以上にぐらついて、倒れて転んだ所にちょうど急カーブを曲がったトラックが現れて。
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