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五.
「うそつき」
私のお葬式で、翔宙が唯一、口にした言葉が、それだった。
ごめんなさい。
ずっと一緒にいるって、翔宙が生まれた時からずっと言ってて、嘘じゃなかったのに、本当にそう思っていたのに、それがこんなことでかなわなくなってしまって、ごめんなさい。
ごめんなさい、私だってずっと一緒にいたかった、ずっと一緒にいたいのよ、ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
私のいない部屋の中で、一人うずくまる翔宙に向かって、何千、何万回、謝っただろう。
その言葉は決して翔宙に届くことは無い。
私はもう、死んでいるのだから。
なのに、だけど、しかし、いつからか翔宙は、私の方をしっかりと見詰めてくるようになった。
そしてついにある日、ゆっくりと私の前へと歩み寄り、口を開くと、
「そんな所で何やってやがんだよ、このうそつきが!いるならいるで何か言いやがれ!」
大声で私をなじった。
「え……」
こんな荒々しい言葉遣いの翔宙など初めて見るため、とっさには声が出ずに立ちすくんでいる私に、
「勝手に死んでんじゃねぇよ!お前がいねぇと色々と面倒臭ぇんだよ!十八っつったってオレはまだ子供なんだからな!ちゃんと最後まで責任持って養うのが親の努めだろうが!ずっと一緒にいるとか、このうそつきが!」
翔宙はさらに声を荒げる。
「十八……?翔宙はまだ十五でしょ……?何を言っているのよ……」
と見つめ返した翔宙の目は、怒りに満ち溢れ、その顔つきも、いつもの翔宙とはまるで別人のように険しくゆがみ、私は思わず身震いをした。
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