五.

1/1
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

五.

「うそつき」 私のお葬式で、翔宙(ショウ)が唯一、口にした言葉が、それだった。 ごめんなさい。 ずっと一緒にいるって、翔宙(ショウ)が生まれた時からずっと言ってて、嘘じゃなかったのに、本当にそう思っていたのに、それがこんなことでかなわなくなってしまって、ごめんなさい。 ごめんなさい、私だってずっと一緒にいたかった、ずっと一緒にいたいのよ、ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 私のいない部屋の中で、一人うずくまる翔宙(ショウ)に向かって、何千、何万回、謝っただろう。 その言葉は決して翔宙(ショウ)に届くことは無い。 私はもう、死んでいるのだから。 なのに、だけど、しかし、いつからか翔宙(ショウ)は、私の方をしっかりと見詰めてくるようになった。 そしてついにある日、ゆっくりと私の前へと歩み寄り、口を開くと、 「そんな所で何やってやがんだよ、このうそつきが!いるならいるで何か言いやがれ!」 大声で私をなじった。 「え……」 こんな荒々しい言葉遣いの翔宙(ショウ)など初めて見るため、とっさには声が出ずに立ちすくんでいる私に、 「勝手に死んでんじゃねぇよ!お前がいねぇと色々と面倒臭ぇんだよ!十八っつったってオレはまだ子供なんだからな!ちゃんと最後まで責任持って養うのが親の努めだろうが!ずっと一緒にいるとか、このうそつきが!」 翔宙(ショウ)はさらに声を荒げる。 「十八……?翔宙(ショウ)はまだ十五でしょ……?何を言っているのよ……」 と見つめ返した翔宙(ショウ)の目は、怒りに満ち溢れ、その顔つきも、いつもの翔宙(ショウ)とはまるで別人のように(けわ)しくゆがみ、私は思わず身震いをした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!