2 新しい人、新しい世界

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2 新しい人、新しい世界

2ー1 あんた、誰? 「ここは、何処だ?」 はい? 僕は、畑で農作業をしていた。 畑の外には、オルガとカヅキ兄さんがのんびりと草むらに腰かけてラクというヤギのような魔物の胃袋で作った水筒に入ったお茶をのんびりと飲んでいた。 僕が作ったハチミツ茶だ。 甘くて、疲れがとれると村人たちに言われているお茶だ。 僕は、鍬を持つ手を休めると、顔をあげてその声の主を見た。 薄汚れて煤けた銀色の鎧を身に付けた長い栗色の髪の若い、というよりは、幼い少年が立っていた。 よく見ると身体中、あちこちに傷を負っているようだった。 「答えろ!」 少年は、居丈高に僕に迫った。 「ここは、何処だ?」 「魔の森の、村、だけど」 僕は、汗を腰につけた布で拭きながら答えた。少年は、一瞬、驚いた様な表情を浮かべた。 「魔の森の、村、だと?」 少年は、まさか、というように頭を振った。 「ここが魔の森なら、お前たちが生きていられる訳がないだろう」 「でも、ほんとに魔の森なんだし」 僕は、少年に向き合った。僕は、兄さんたちと違って背があまり高くないんだが、少年は、僕よりもさらに5センチぐらい背が低くて、華奢だった。 「君、怪我してるのか?」 僕は、少年の方へと歩み寄ると彼の体に手を伸ばそうとした。 少年は、びくっと体を強張らせると、僕の手を振り払おうとしたが、僕は、そっと彼の肩に触れると言った。 「この人の怪我は、癒される」 ぽぅっと優しい光が少年を包み込んだ。 傷が治っていくのを理解すると、少年は、僕に申し訳なさげに言った。 「ありがとう」 「いや、いいんだが」 僕は、少年の傷が癒えるのを確認すると手をひいた。 少年は、自分の両腕や、足を見回すと、感嘆したかのように言った。 「すごい。王都の神官長だって、こんな完全には、癒せないのに」 そうなの? 僕は、少年を見つめて思っていた。 この子は、きな臭い匂いがする。 彼を見つめている僕の目の前で少年は、僕の前に進み出た。 「先程は、失礼をしました」 少年は、僕の前にひざまづいて僕に訊ねた。 「どうか、お答えください。あなたが、光の御子なのですか?」 何、それ? 僕は、なんだか、嫌な予感がしていた。
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