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1ー6 家を作ってみた。
僕の言霊使いの能力は、どうやら戦いのみに使うだけのものではないようだった。
僕は、村の人々に頼まれて折れた剣をなおしたり、怪我や病気も治すこともできた。
「無職でスキルもないのに、なぜだ?」
ラック爺は、不思議がった。
僕は、そっとステータスを開いてみた。
すると、職業は相変わらず無職だったが、スキルには、『言霊使い』があった。しかも、『光の御子』という称号までついている。
マジか?
村人たちは、僕のことを疑問を持ちながらも今までと変わることなく受け入れてくれた。
僕は、この村の人たちにお礼をしたいと思っていた。
この村は、外から物資も人もほとんど入ってこない。完全な自給自足で暮らしている。
だが、この森で手に入るものといえば、いくらかの植物と魔物の肉ぐらいで、村は、とても貧しい暮らしをしていた。
僕は、まず、この村の暮らしをもう少しよくしたいと思った。
まずは、衣食住のうちの住、つまり家を作ることにした。
みんな、木の棒を組み合わせただけの掘っ立て小屋で暮らしているのだが、地面は、じめじめしていて住み心地はあまりよくなかった。
僕は、試しに森に行って、木々に向かって言った。
「斬り倒され、丸太になれ」
次の瞬間、その木は、丸太になって地面に転がっていた。
僕は、それを運ぶために丸太を収納できるストレージのようなものが欲しいと思った。
「丸太は、僕のストレージに収納される」
すると、丸太は、跡形もなく消えた。
ステータスを見ると、スキルにストレージが加わっていた。
僕は、何本も丸太を作り収納すると村へ帰り、村の隅にある空き地へと向かった。
「何をしているんだ?ユヅキ」
人化の術を使ったハヅキ兄さんが僕のことを見つけてついてくる。
「うん」
僕は、ハヅキ兄さんに答えた。
「家を作ろうと思って」
「家を?」
僕は、空き地に着くと言った。
「木で家を作る。柱を立てて、壁を作り、屋根をふく」
ストレージから加工された木の柱やら板が出てくると、それらが次々に組み立てられていく。
あっという間に家が完成した。
「すごいな、ユヅキ」
ハヅキ兄さんは、目を丸くしていた。
僕は、兄さんに誉められて少しいい気になっていた。
次々に空いた場所に家を建てると、僕は、僕たちを遠巻きにして見守っている村人たちに言った。
「家を作ってみたんだ。みんなで、使って」
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