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1ー8 甘いもの、いかが?
こうなってくると、なんだか甘いものも食べたくなってくる。
僕は、地図で砂糖の代わりになりそうなものがないか探した。
うん。
この森には、チータという巨大な蜂の魔物がいるのだが、それが巣にためている蜜があるらしい。
僕は、森へと入っていくとチータの巣を探した。
チータは、30センチぐらいの大きさがある凶暴な魔物だ。
特に巣に近づく者には、容赦なく襲いかかってくる。
僕は、森の奥でチータの巣を見つけると、そっと近づいていった。
すぐに、臨戦態勢になったチータの群れが僕に襲いかかってくる。
「障壁」
僕は、自分の回りに透明な壁を作った。
チータの群れは、壁のために僕に近づくことができない。
僕は、チータに言った。
「お前たちは、これから僕の眷族となれ」
蜂たちの間に、びりっとした電気のようにその言葉が浸透していくのを確認してから、僕は、障壁を解いた。
巨大な蜂たちは、僕の回りを飛び回っていた。
僕は、群れの中へとゆっくりと歩を進めていく。
巣に向かう僕に、蜂たちは、道を開けていく。
僕は、チータの巣へと手を突っ込むとその巣を一欠片取り出してストレージへとしまった。
村へと帰ると、僕は、ストレージからハチミツだけを木製の壺に入れて取り出した。
オルガと人化したカヅキ兄さんが興味シンシンという様子で、僕の持っている木の壺を覗き込んでいた。
「蜂蜜だよ」
僕は、指先で金色の粘りけのある液体をすくい、カヅキ兄さんの方へと指を差し出した。
僕の指先をぱくっと咥えて蜂蜜を舐めとると、兄さんは、うっとりとした表情を浮かべた。
「甘いなぁ」
「ええっ?」
オルガが僕にずいっと迫ると、言った。
「ずるい、ずるい!カヅキだけ!」
仕方なく、僕は、オルガにも蜂蜜をすくって指を差し出した。
オルガは、僕の指先をペロリと舐めとると、瞳を潤ませた。
「おいしい~!」
僕は、この蜂蜜で飴を作ることにした。
蜂蜜の中の水分を蒸発させて飴を固めて細い棒の先にさしてべっこう飴みたいにしてみたら、村の人たちが喜んでくれた。
「こんな旨いもの、食べたことがない!」
マジか?
僕は、ラック爺の方を伺った。
ラック爺は、うんうん、と頷くと言った。
「街にも、王都にも、こんな旨いものはなかった」
ええっ?
もしかして、この世界、お菓子がないの?
甘味に飢えていたらしいホブゴブたちも、大層喜んで飴を食べていた。
こんな風にして、村の生活レベルは、どんどん上がっていった。
だが、相変わらず森からは、出られなかった。
僕にとっては、その方がよかったので、僕は、それについてはあえて、何も言わなかった。
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