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彼と出会ったのは、とても悲しい気持ちでいた、ある冬の日のことだった。
「こんにちわ」
「……だれ?」
涙で濡れた顔を上げると、春の陽射しのようなあたたかい笑顔に出会った。
サファイアのような青の瞳。恋しい誰かを思わせるその柔らかな眼差しに、涙がピタリと止まった。
綺麗な金色の髪が揺れて、泣き伏せていたわたしと視線を合わせる。
「僕の名前はセレン。今日から貴女の傍にいる者です」
「わたしの、そばに?」
わたしが問うと彼は微笑んだままこくんと頷いた。
「僕が──いえ、私が貴女の傍にいます。亡くなられたお父様の代わりに、貴女が立派な淑女となられるその日まで、ずっと」
☆・*:.。..。.:*・☆☆・*:.。..。.:*・☆
ドールトルソーに着せた純白のドレスの裾がふわりと揺れる。
薔薇模様のレース生地に散りばめられたパールの粒が、部屋の照明に反射してキラキラと輝く。
これは、わたしが明日の結婚式で着るウェディングドレス。
明日は早いのに眠れなくて、わたしはソファに座りぼんやりとドレスを眺めていた。
別に明日が楽しみで眠れないという訳ではないのだけれど、マリッジブルーというものかしら。
「寒いわね……」
また、ドレスの裾が揺れた。寒さで身体がぶるりと震え、そういえば窓が開けっ放しだった事を思い出した。
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