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不用心だと叱るセレンの声が聞こえた気がして、わたしは窓へと近づいた。
窓枠に手をかけて、ふと動きを止める。
目に入った夜空がとても綺麗で、わたしは外に顔を出した。
冬の寒さが肌を刺す。
澄み切った夜空に輝く星たち。
そこに知っている星を見つけ、わたしは星と星を繋いだ。
右上にある赤い星はペテルギウス。
左下の白い星をリゲル。
真ん中の三ツ星はオリオンの三ツ星。
その形は──冬の代表星座オリオン。
オリオン座は他の星座を探す目印になるらしい。
ペテルギウスから東にこいぬ座のプロキオン。そこから更に南にはおおいぬ座の星シリウス。そしてそれらの星を線で結ぶと『冬の大三角形』が出来るのだと。
そう昔、彼に教わった。
(あの時も、こんな星空だったわね)
セレンが来て間もない頃に見た、あの煌めき。
セレンの存在にお父様が亡くなった悲しみが少しは癒えた気がしたのに、やっぱり悲しくて夜は泣くことが多かった。
セレンはその事に気づいて励まそうと考えてくれたのでしょう。
ある夜セレンが部屋にやって来てこう言ったの。
『今から秘密のお出かけを致しましょう』
彼は悪戯を計画した子供のように笑った。
(十年……長いようで、あっという間だったわ)
いくつかおぼろげにはなっているものの、出会ったあのころの記憶だけは今でもはっきりと思い出せる。
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