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そもそもこんな庭があるってだけで家族は喜んでいた。内見の時の母さんと姉氏のはしゃぎっぷりときたら、犬を飼おうやら家庭菜園やら妄想を爆発させていた。
熱は冷めるもの。いざ引っ越しが終わった頃にはどうでもよくなったらしい。うちの女たちは秋の空よりも移ろいやすかった。
こうしてしだれ柳だけがある庭となっているが、この家にはこういうシンプルな庭がよく似合っている。
ご近所はどこもかしこもモダンな民家。
ここらで異彩を放つ我が家は、タイムリープしてきたみたいな日本家屋だった。とは言ってもだいぶ小さいが……。
縁側もあるし、テントを張れるくらいの充分な広さの庭だってある。なんだかんだで俺も気に入ってるし。
この家を選んだ父さんには感謝してる。その証拠に、夏休みの体たらくっぷりを先ほどまでいかんなく発揮していたのだから。
ただ俺がこうして庭先にいるのは別の理由もある。
内見の際、この庭を一目見た時から、喉仏に異物が詰まっているようなモヤリ感に思い悩ませていた。
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