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思い出す時とは似て非なる感覚だった。
他人の記憶を覗き込んだような……。でも鮮明に、あの時の感情を憶えている。
しだれ柳がまた囁きかける。
葉の1つ1つが、喜々として語りかけてくるみたいに。
暖かい風が冷や汗を拭う。
はっきりとした声が動揺する俺を我に返した。
びくっと身体を震わせ、振り向く。そこには甚平を着た父さんがいた。
家では甚平を着こなす父さん。小学生の時の参観日にも、甚平でやってきて恥ずかしかったが、今となってはなんとも思わなくなってしまった。
生返事をすると、父さんは様子がおかしい俺を笑い、手に抱えた段ボールを座卓に置いた。
父さんは段ボールの中身を取り出した。古いアルバムのようだ。
見たことのないアルバムを見て問いかけると、父さんは優しく笑みを浮かべて、「俺の先祖のアルバムだ」と言い、アルバムを開いた。
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