第一章

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   嫌なことを言っているな、と自分でも思う。  けれど、そういう考え方をするのは周りのクラスメイトたちも同じだろう、という気持ちもあった。  実際、学校で祓川に寄ってくるのは下心を持った女子だけだ。  男子は特に必要に迫られない限り話しかけようともしてこない。  だから一層、いま目の前で笑っているこの少女の行動が不思議に思えてならなかったのだ。  彼女は自分ではなく、他の男のことが好きなのにと。 「うーん……。そういうの、考えすぎじゃないかしら? 私は別に、会いたいときに会って、話したいときに話せたらそれでいいと思うけど。私が今日ここに来たのは、あなたに昨日のことを謝りたいと思ったからだし、こうして今あなたと話せて良かったと思ってるわよ?」  ね、と明るく笑う高原の姿は、祓川には眩しかった。  と同時に、彼女に想いを寄せられている狭野のことが、心底羨ましくて仕方がなかった。 (俺がもし、神主の息子じゃなかったら……)  もしも神社の跡取りでも何でもない、普通の家庭で育っていたなら。  昨夜、神楽殿の前から走り去っていった彼女のことを追いかけることができたのに――と、舞台の上から見た光景を思い出しては、叶わない夢に思いを馳せた。  
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