13人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「ん? どうかしたの?」
きょとん、と首を傾げる高原の前で、狭野は口を半開きにしたまま固まっていた。
今、どう考えても物理的に不可能なことが起こった。
見間違いでなければ一瞬だけ、二人の少女の身体が重なって、そのまますり抜けたのだ。
「どうなってるんだ……? 僕の目がおかしいのかな。それとも、これは夢?」
「なに一人でぶつぶつ言ってんのよ。それより、ちゃんとベビーカステラは買っておいてくれた? ……って、その袋、一番小さいやつでしょ。中くらいのサイズにしてって言ったのに!」
高原は狭野の手元を見るなり、悲しそうな声を上げた。
「あれ、そうだっけ? でも、あんまりいっぱい食べると太るよ。カステラって結構カロリー高いし、むしろこれくらいの量にしておいて良かったんじゃない?」
悪びれもせずに狭野が言うと、高原は「大きなお世話よ!」と顔を真っ赤にして怒鳴る。
そんな二人のやり取りを隣で眺めていた少女は、ふふっと可笑しそうに肩を震わせて笑った。
「二人とも、仲が良いのね」
そう言って慎ましやかに笑う彼女の姿に、狭野の視線は再び熱を帯びる。
最初のコメントを投稿しよう!