第一章

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  「ん? どうかしたの?」  きょとん、と首を傾げる高原の前で、狭野は口を半開きにしたまま固まっていた。  今、どう考えても物理的に不可能なことが起こった。  見間違いでなければ一瞬だけ、二人の少女の身体が重なって、そのまますり抜けたのだ。 「どうなってるんだ……? 僕の目がおかしいのかな。それとも、これは夢?」 「なに一人でぶつぶつ言ってんのよ。それより、ちゃんとベビーカステラは買っておいてくれた? ……って、その袋、一番小さいやつでしょ。中くらいのサイズにしてって言ったのに!」  高原は狭野の手元を見るなり、悲しそうな声を上げた。 「あれ、そうだっけ? でも、あんまりいっぱい食べると太るよ。カステラって結構カロリー高いし、むしろこれくらいの量にしておいて良かったんじゃない?」  悪びれもせずに狭野が言うと、高原は「大きなお世話よ!」と顔を真っ赤にして怒鳴る。  そんな二人のやり取りを隣で眺めていた少女は、ふふっと可笑しそうに肩を震わせて笑った。   「二人とも、仲が良いのね」  そう言って慎ましやかに笑う彼女の姿に、狭野の視線は再び熱を帯びる。  
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